かもめカブの左スイッチをバラして直した話


 ある日、かもめカブのライトスイッチを切り替えたところ、それっきり点かなくなってしまった。と思ったら、手でスイッチを押してやると点いた。このかもめカブは1979年製という大変古い個体なので、スイッチの接点が汚れているか酸化して接触不良を起こしているのだろうと思い、メンテを決意した。すでに別の人が何人もスイッチのOHの記録を残していて、そんなに難しい作業ではない予定でいたが思わぬ落とし穴が待っていた。


  かもめカブの左スイッチ。パーツリスト上での名前はライティングスイッチASSY。アッシーと言う通りバラの部品は販売されておらず、壊れるとこれ丸ごと交換となる。古い車両なのでオンオフスイッチが備わっている。80〜90年代の車両はON-OFFスイッチが横向きだが、かもめの時代は縦二連のスイッチになっている。外し方は、まず上の黒いツマミを外す。年式によってはネジ止めされていることもあるようだが、このかもめは単に嵌め込まれているだけだったので、マイナスドライバで抉ってやると取れた。そして裏のネジ二本外せばケースが上下に分かれる。2009年までのカブも多分同じ。多分。

  電線で繋がっているので完全に分離はしない。中のネジ3本を外すと基板も外すことができる。今回調子が悪いのはON-OFFスイッチの方(向かって左)の方である。単純なスイッチだと思っていたら接点が6つもあって想像以上に複雑だった。6V時代はヘッドライトの消灯時とポジションランプ点灯時は、余った電気を抵抗器に流して消費させていたため、その分の回路もあって少し複雑な構造をしているのだろう。今(98年の法改正以降)はヘッドライトを消灯することができなくなったのとポジションランプが廃止されたため、これよりもだいぶ簡略化されているはず。。

  前後に動く白色の部品を外すと、コの字型の小さな金属片が入っている。これが汚れていて電気が通りづらくなっているようだ。大変に小さい上にバネの力で押さえつけられているので、外すとき飛ばさないように注意。接点は綿棒にメッキ用コンパウンド(粒子が細かく、削りすぎないので良い)をつけて磨こうと思ったが、酸化がひどく表面が黒く変色していたので、リューターにワイヤーブラシをつけて薄皮一枚剥いてやることにした。きれいになったら接点グリスを塗布する。

  そして逆の手順で組み付けてやるわけだが、その時ぽろりと何かが落ちてきた。見ると中に入っていた絶縁体が真っ二つに割れていた。左の画像は接着剤でなんとか修復できないかと足掻いた後なので汚くなっているが、本来は右側のかけらのような薄い焦げ茶の樹脂片である。この小片はバネと一緒に端子を接点に押し付ける役割と、双方の接点が接触しないように隔離する機能があるようだった。バネのテンションが掛かるところなので、戻すときの負荷で割れてしまったようだ。こいつがないことにはヘッドライトを使うことが出来ない。しかし部品単体の供給はない。あったとしても年式的に廃盤になっている公算が高いが。

  仕方がないので作ることにした。いらん仕事が増えてしまった。触った感じや見た感じ、電気基板と同じ材質出できているようだった。そこで適当な基板から切り出して作ることにした。ガラクタの中に、いつ何のために作ったかもわからないような電子工作の残骸があったので、リューターに回転砥石を付け切り出した。粉塵を吸わないように注意。画像はすでに切り出した後。元の絶縁板が厚さ0.7mmだったのに対し、電子工作の基板は1.4mmと倍の厚さ。削らないと入らないかなと思ったが、後述の薄い板を使って入れたら入ったのでまあよしとする。

  部品一覧。右下が切り出した絶縁板。電子工作用のなので穴が空いている。ジャンク家電の基板のスペースの広いところを切ったほうが見てくれ良かっただろうが、探してくるのが面倒くさかった。上記の通り、ヘッドライトの回路とレジスタにつながる回路を同時に切り替えているので、コの字型の摺板が2つある。小さな金属ボールは切り替え時のカチッカチッとしたクリック感を出すためのもの。これもバネの力で飛び出してくるのでバラすときになくさないように注意。可能ならスイッチを完全に車体から取り外して作業すると安全。ギボシはヘッドライト裏にある。

  元に戻す時、バネの力で部品がせり出てきて中に入れるのは至難の業である。なので薄くて硬い板状のもので滑らせて入れる。ここではアルミ缶を短冊状に切って使った。エンジンキーを切っておけばショートの心配はない。仮にショートしてもいずれかのランプが点灯するだけだと思うが。心配なら刺し身のパックの蓋でもよい。

 祝点灯。


 おまけ。どの接点に何色がつながっているかの図。スペアとして確保した社外品なので基板が白色。作りもややチャチだが、構造はほぼ同じ。電線色も同じだった。


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