78年式かもめカブにボアアップキットを取り付ける

 カブをボアアップしたい。なぜそう思ったのか自分でもよく覚えていない。ただ、普段CD125Tも乗り回していて、二種原付きの快適さに、気付かないふりをしていた50ccのパワーのなさを誤魔化しきれなくなっていたのかもしれない。スピード狂ではないので最高速は求めていないのだが、とにかく登坂能力のなさにはうんざりする。そこでボアアップを決意した。ボアアップ、つまり排気量アップである。当然ながら50ccを超えるので小型限定自動二輪免許以上が必要となる。免許のない人は教習所にGO!

 カブのボアアップは、各サードパーティーから様々なキットががリリースされているので、極めて簡単な部類である。 まずは何ccにするかである。カブのボアアップキットには50ccベース用と90ccベース用がある。70ccは不明。90ccベースなら125ccオーバー(軽二輪登録可能)のものもある。しかし50ccベースなら100ccあたりが限界で、それもキャブレターやらヘッドやらの強化が必要で、総額で中古のカブが買えてしまうほどになるらしい。それでいて耐久性はだだ下がりになるので下駄車に装着するには現実的ではない。やはり72〜75、85〜88ccあたりがメジャーだろうか。 ただ、かもめカブ(6Vエンジン)に装着可能という条件をつけると、選択肢は狭まるかと思う。具体的に言うと、ピストンの形状が違うため、間違って12V車用のものを取り付けると、ピストンがバルブにヒットして異音が.....と言うか、エンジンエンジンブローに繋がるようだ。と言うか、組み付け自体できないかも。なんで、車体番号を控え、きちんと対応かどうかを確認してから購入しなければならない。自分のかもめは車体番号C50-681xxxxである。三樹書房の「ホンダスーパーカブ―世界のロングセラー」の巻末資料によると、C50-681xxxxはC50KZ型(C50-600001)のグループに入るようだ。 数少ない選択肢の中で、自分はキタコのライトボアアップキット(75cc)を選択した。なぜなら75ccくらいが一番コスパが良いと考えられるからだ。たった25ccの排気量アップでも、元の排気量の1.5倍である。恩恵は大きい。さらにヘッドやキャブレターは小変更のみでノーマルのものがつかえる。つまりコストも最小限に収められる。 さらに耐久性の面である。言うまでもなく、パワーが上がればエンジン内部の部品にかかるストレスは上がる。あまり欲張ってパワーを上げると著しく寿命を低下させることになるだろう。嬉しいことに、6Vカブ50のOHCエンジンはC65をベースに設計されているらしく、元々の耐久性が高く、75cc程度のボアアップなら寿命の低下も誤差の範囲内らしい(ただし、自分のかもめは6V末期のもので、12V車の特徴も合わせ待っているとかなんとか。仮にそうなら耐久性は12Vと変わらないのかも? まあ、だったらなおさら控えめの75ccにしておくべきだろう)。以上を総合して決定した。

<前提> 
車体:C50KZ型(C50-681*****)
居住地がボアアップに寛容な自治体であること(重要

<用意したもの> 
キタコ ライトボアアップキット 212-1013480(12V車用と6V車用があるので製品品番を確認して買うこと)
エンジンオイル(初期の潤滑のために塗りまくる)

 適合する部品がわかったら、あとはいらない情報(既にネットにあふれている情報)なので端折り気味に書く↓。

 
   購入したキット。必要なものはガスケットの一枚まで付属しているので、自分では工具のみ用意すればいい。
   開封の儀。付属品が揃っているか確認する。エンジンをばらしてから足りないことに気付くと悲しい。
   下準備として、ピストンにピストンエリングをはめる。オイル下がりを防ぐために、切り欠きを120度ずらして取り付ける。ついでに紙やすりでピストンの角を軽く撫でる程度に磨くといいとかなんとか。
   レッグをひん剥く。マフラーも外す。
   ジェネカバーを外す。本来外さなくても作業できるのだが、かもめ特有のフィン部分が邪魔なので外す。
   プラグの前にあるボルトを緩める。
   すると反対側にある円盤(カムスプロケットカバー)が外れる。
   フライホイールのTマークとカムスプロケットの丸印をそれぞれの印に合わせる。(圧縮上死点に合わせれば必然的に合う)。愛車はベースプレートとフライホイールをタケガワのアウターローター(6VシャリィCDI化キット)に交換しているが、ノーマルでも勿論おなじこと。
   カムスプロケットを固定している3つのボルトを外す。
   カムスプロケが外れるのですかさず針金などで固定。カムがずれるとピストンの動きとバルブの動きが合わなくなり、点火不良やバルブやピストンの破損につながる。
   ヘッドのナット4つと、側面にある+ネジ一本を外す。4個の内1個だけ種類が違う。そこがオイルラインになっているとかなんとか。よくわからんので、外したものは元の場所に戻すと覚えておこう。
   インマニを固定しているボルトを外せば、いよいよヘッドが外せる。大抵の車両が、ガスケットのこびりつきでなかなか外せないだろう。プラハンやゴムハンマーで衝撃を与える必要がある。自分は素人ゆえ、どの程度の強さで叩いて良いかわからず、外れるまでに結構時間がかかった。外したヘッドはあまりいじらないほうがいい。バルブの動きが面白いかとカムシャフトを回したくなるが、戻した後で360度ずれていることに気づいて「うわああああああ」となりかねない。
   次はシリンダーである。左側面のボルトを外す。
   すると中にあるガイドローラーが外れる。今思えば、結構摩耗してるっぽい。新品に交換しておけばよかったなあと。つか、6Vエンジンのガイドローラーって部品供給あるのだろうか。12V用でもつくのかな?
   直ぐ側にある+ネジを外す。
   カムチェーンを逃しながら上手くシリンダーを引き抜く。ピストンとご対面。
   ピストンの横の穴にサークリップと呼ばれるCの字型の金具が嵌っている。ラジオペンチなど先の細いもので取り外す。
   ピストンピンが抜け、コンロッドからピストンが外れる。
   普段見られないアングルなのでしばし観察する。(しなくていい)
   ぱっと見で大きさの違いがわかるピストン。言うまでもなく、きれいで大きい方が75ccのピストン。
   いよいよ新しい部品の装着に掛かる。新しいシリンダーに新しいピストンを半分だけ挿入する。ピストンには矢印が書かれているので、矢印を下向きにして入れる。組み付ける前にはオイルを塗ること。でないといきなり焼き付いたり寿命を縮めたりするのだそう。ピストンリングがジャマをするので、少しずつ縮めながら挿入してゆく。
   ガスケットやオイル流路のパッキン類を新しいものに変え、シリンダーを装着する。
   ピストンの向きを合わせ、コンロッドを指で持ち上げながらシリンダとピストンを奥まで挿入する。場所をあわせてピストンピンを挿入し、新しいサークリップで固定する。ここまでくれば、完成はほぼ約束されたといえる。
   いきなり完成一歩手前の図。激しく手が汚れるのであんまりカメラに触れんのよ。まあ、基本外したときと逆のことをするだけなので、そんなに迷うことはないだろう。

 部品の組付けが終わったら、プラグを抜いてキックペダルを手でゆっくり押し下げてみる。数回やって、異音や抵抗感がないようなら、足を使って、勢い良く踏み降ろしてみる。異状がないことが確認できたらプラグを戻し、エンジンキーを入れ、キックしてみる。重い! 今までとは違う確かな足応えがある。これが75ccの圧縮か。エンジンは程なくかかった。異音は聞かれないので一安心といった所。早速近所の農道で試走することにした。

<インプレ>

 明らかにトルクがアップしている。気のせいではない。自宅前に50mほど急坂道があるが、ボアアップ前は2速でギリギリ、たまに助走が足りないと、1速に落とさなくては登りきれなかった。その坂が、今は2速で余裕で登れてしまう。スバラシイ。
 しかし、上が全然伸びない。40キロを越えたあたりからエンジンがぐずつきはじめ、すぐ頭打ちになる。しかしこれは当然のこと。なぜならキャブレターが50cc用のままだからである。つまり、燃料供給がおっつかないのだ。解決策は大容量キャブレターへの交換だが、75ccならノーマルキャブのメインジェットの番手を上げるだけでも効果があるらしい。まあ、そのへんのことは後にしてナンバーの取得である。二種原付になるので黄色ナンバーが必要になる。印鑑やら身分証やら、キットの取説類(これ重要)を持って役場へGO!

 二種登録の方法は、自治体によって勝手が違うので一概には言えない。当方の居住地では、75ccであることを証明できたら黄色ナンバーを出してくれた。具体的には、キットの取説を持っていって、75ccと書いてあるところを指差したらOKだった。この辺、村なので結構緩いようだ。厳しい自治体では、そもそも一種の二種への変更ができないとか、整備士免許を持っていない者の申請を受理してくれないところもあるようだ。地元のバイク屋に行ってその辺聞きだせるなら良。


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