かもめカブ

 これは元々学生時代の友人が乗っていたものだった。初めて見た時、まずクランクケースのカバーの形状に目が留まった。更にメインキーの場所も今のものとは大きく違っていた。この時初めて、ずっと同じだと思っていたスーパーカブの、年式による形状の違いを意識した。さすがに角目と丸目の違いは知っていたが、かもめとか行灯とか鷲鼻とか、様々な俗称があるのは知らなかった。そしてその友人はこうのたまった。

「買わないか?」

 いわゆる一目惚れってやつだった。そこからトントンに交渉がまとまり、2万5千円で買い取ることになった。個人売買だし、初代C100とかならともかく、かもめ程度の古さなら当時はそれほどの価値はなかった(今は知らん)。

 入手当時の姿。当時はレッグが切られていたり、チェーンガードやリアキャリアが欠品していた。エアフィルターもパワーフィルターが装着されている。そのせいか、当初はキャブレターが半づまり状態だった。リアショックの長さに注目。6V車の後期は270mmのショックを採用している。ただし、バネやダンパーの長さは12V車とあまり変わりない。サスの足(パーツリストによるとリアークッションボトムメタル)の長さが違う。

 

 正面から。レッグがないとほっそりした印象。ハンドルはかもめが翼を広げたような形状をしており、そこからかもめカブと呼ばれるようになった。。ステムカバーは鉄製で車体色と同色に塗装されている。ヘッドライトはガラス製で曇り知らずである。

 スピードメーター。12V車よりも一回り大きい。昔の車両なので、50ccなのに75km/hまで目盛りが振ってある。速度警告灯なんてないし、当然スピードリミッターなんてものもない。

 メインキーは12V車で言うエアクリーナーボックスの辺りに配置されている。本来はレッグを貫通している。ちなみにキーOFF時にホーンボタンを押すとウインカーランプが点灯する機能はこの型にはなく、配線が4本だけの簡素なキースイッチとなっている。(その機能がある型はメインスイッチで回路を切り替えているので、その分の配線がメインスイッチまで来ていて本数が多い)

 かもめ最大の特徴であるエンジン周り。ジェネカバーとクラッチカバーが前方に長く、シリンダ横まで来ている。スリットは温風で足を暖めるものだろうか? クジラエンジンとも呼ばれるらしい。ポイント点火式なので点検調整用の蓋がある。ニューシフトパターンという、現在と同じN-1-2-3のシフトを採用したのはこの型かららしい。

 

 左右スイッチ周り。チョークワイヤーやアクセルワイヤの取り出し口がなく、かなりスリムな印象。ミラー穴は車体側に開いている。ちなみに左ミラー穴はネジが切られてなく、自分で加工するか挟み込みタイプのミラーが必要。チョークワイヤーはメーター下、アクセルワイヤーはインナースロットルを採用していてハンドル内を通っている。このインナースロットルが曲者で、たまに油切れで固着してスロットルがガッチガチに固くなる。自分も一度、家から遠く離れた山道で固まってしまい、オイルキャップでエンジンオイルを塗って急場をしのいだことがある。(車載工具って頼もしいよね

 

DATA
車名:スーパーカブデラックス
年式:1978年式
機種コード:C50KZ


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