2日目

 去年は交通博物館へ行ったが、滅多に来られない東京である。二年連続で行くのもあれだし、第一、閉館してしまっているので、今年は野辺山へ行くこととする。言わずと知れたJR最高地点である。昨年横川へ行ったときは100キロを越す小旅行だったが、こちらは200キロ近い中旅行である。とりあえず世田谷線で下高井戸へ行き、京王線で高尾まで出ることとする。
 当たり前だが、高知と比べると感動するほど運賃が安い。おまけに京王は特急料金がかからない。高知で特急に乗ると普通列車の2倍の料金がかかることになる。残念ながら丁度の特急列車がなかったので快速に乗った。それにしても下高井戸-高尾間37キロを330円は安い。高知じゃ場所にもよるが、330円では20キロほどしか移動できない。
 高尾着。中央線に乗り換えである。ここから18切符を使用する。片道2500円ちょっとなので往復なら十分元が取れる。ちなみに今回の野辺山行きには姉が一緒である。休暇が取れたので、久しぶりに家族旅行(母がいないが)をしようということになったのである。
中央本線普通 8時44分発、高尾発小淵沢行き乗車。結構混んでいる。家族連れや、登山客風の人が多い。
 東京というのは実に地形が極端なところだと思う。高尾まで平坦で建物が多く、発展していたと思ったのに、高尾を出てひとつトンネルを抜けると極端に田舎になった。トンネルが連続し、センターラインの無い狭い道がつかず離れず続いている。段々畑が斜面にへばりつき、その横を中央線は20パーミルを越す急勾配で上っていく。途中には長大隧道もあり、複線電化されていることを除けば土讃線の土佐山田-琴平の車窓とそう変わらない。しかし走るのは電車なので、高知では考えられないスピードで勾配を上ってゆく。エンジン音を響かせなくりゆっくり上っていく土讃線とはまるっきり性格が違う。
 相模湖駅到着。最初の一区間がものすごく長く感じられた。実は高尾を出る段階で15分近く遅れていた。なんでも線路内に侵入者を発見したため安全確認のため抑止だそうだ。そのため発車しても徐行運転をしていた。途中上り線に特急が止まっていたが、まさか人身じゃないよね?
 初めて乗る路線は楽しい。初めて見る景色にはじめて乗る車両(じゃない場合も多いが)。旧線跡も発見してしまった。廃線趣味をやっているとこういう発見は実にうれしい。中央東線はスイッチバック跡も多い。スイッチバック銀座とか呼ばれていたそうである。しかし山梨に入るとだんだん飽きてきた。高尾から2時間半、同じ席に乗り続けである。始発駅から乗り通したのは同じ車両の乗客の中では私達だけだろうと思う。
 11時17分、小淵沢着。小海線に乗り換える。待っていたのはキハ111-111。凄いぞろ目。既に車内は満席。今までずっと座っていたから、たまに立つのもいいか。勿論最前部を陣取る。キハ110系列は四国の1000系と同じ時期に製作された車両であるが、1000系より高性能な感じがした。エンジン出力も110の方が若干高いが、それよりも変速時の振動や重力の変化が1000系よりも少なく、滑らかである。ただ、なぜかノッチを絞って50キロ以上の速度を出さないでいた。長野に入り、勾配が収まると60キロを越えていたのでオーバーヒート防止か何かだろうか? 小海線は実に景色がよい。自然が美しい。高知も自然がいっぱいだが、杉林や雑木林が多く、ちょっと暗い緑が多いが、こっちは明るい緑が多い。そしてやっぱり空気もおいしい。小海線の沿線も楽しい。小淵沢の大カーブはぜひ写真をとってみたい(ヘタクソのくせに)。何回か林道を横切るが、踏み切りは第四種。こんな景色が繰り返される。ぜひ走ってみたい道だ。リスも現れるそうだ。わたしも雑木林の中に消えてゆく茶色い影を見たが、リスだったのかもしれない。ちなみに父と姉は1990年の冬に一度訪れている。その当時はキハ58だったそうだ。
 清里到着。次の駅が野辺山である。ここで大半の客が降りた。清里も有名な観光地である。90年の旅行のときは清里に泊まったそうだ。清里を出ると少し早めのアナウンスがかかる。JR標高最高地点が近づいているという案内が始まった。野辺山駅がJR標高最高地点ではない。県境付近がサミットになっているため、駅から3キロほど小淵沢方面へ行ったところが一番高くなっており、標高は1375である。最高地点となる踏み切りではカメラが砲列を作っていた。12時11分、野辺山着。さらに客が降りる。野辺山までに大半の客が降りてしまうらしい。「野辺山まで乗ったら小海線の半分を見たようなものだ」と、同乗してきたどっかの親子が話していた。とりあえず撮影撮影っと。野辺山駅の標高は1345.67メートル。これは覚えやすい。1から7までの数字から2だけ抜けばよいのだから。踏み切りからは25メートルほど低い。駅を出る。意外と寂しいもんである。清里は小さな街を形成していたが、こっちは集落ぐらいの規模である。しっかり土産屋だけはあるが。非鉄の観光客も結構いるらしい。本当はJR標高最高地点まで行きたかったが、駅から遠いし、姉は鉄道に興味はないのでいけなかった。代わりに列車内から動画撮影してきた。 動画(別窓) 売店で栗が丸ごと入ったアイスを買って食べた。冷やし過ぎで硬かったが、意外とおいしい。
結局のところ一時間ほどしか居られなかった。日帰りであるからいたしかたない。(ところでこの帰り姉が晩御飯をおごってくれた。雹でも降らねばよいが。)

三日目

 早くも帰る日がやってきてしまった。今年も去年と同じで岡山まで18切符、そこから伊野まで特急である。しかし早くも寝坊しかなり慌てた。計画より3本も後の電車に乗ることになったが、幸い岡山につくまでに時間差はかなり小さくなっていた。昨年と同じく特急で帰る。懐かしいディーゼルエンジンの音と振動に浸りながら本州を後にした。