79年製かもめカブCDI化

 かもめカブはポイント点火式である。長く乗っていれば、接点が焼けたりずれたりしてエンジンの調子が悪くなる。人里離れた所でエンストした時の絶望感は筆舌に尽くし難い物がある。ポイント調整はそれほど難しくない。自分も一度やらかしてから出先で困らないように、タイミングライトなしでも自走できる程度にポイントを調整できるように練習はしている。帰ってから調子が良くなるように再度調整し直すわけだが、隙間とにらめっこするたびに思う。CDIならいいのになあと。ならば、やってしまおうじゃないかと。

 インターネットでCDI化できないか色々調べてみたところ、一番手っ取り早いのはCDI仕様のエンジンとハーネスを手に入れて載せ替えることだそうだ。カブのエンジンは取り付け部分が共通らしく、異年式のエンジンを割りと簡単に載せ替えられるらしい。しかしこの方法は見送った。なぜならジェネレーターカバーの形が問題だからだ。機種にもよるが、70年代のカブにはジェネレーターカバーとクラッチカバーが前方向に長く、シリンダ横まで来ているものがある。当然、レッグシールドの形も違うし、マウント方法も微妙に違う。このチャームポイント?を消したくないし、レッグに大穴が空くのも嫌だった。加えてエンジンナンバーとフレームナンバーが大きくズレるのも嫌だった。てなわけで、今載っているエンジンをベースにCDI化をしたいのだ。

 次に6VCDIエンジンの部品を使いCDI化できないか探ってみた。6V車でも末期の車両にはCDI仕様があったのだ。部品も共通点が多く、流用できるらしい。この方法はイケそうだったが、丁度いい出物がなかったので断念した。

 更に調査を進めると、意外なところに突破口があった。なんと6Vシャリイを12VCDI化できるキットが発売されていた。スーパーカブのエンジンは、他のHONDA製ミニバイクにも多数採用されている。時代によって多少細部が異なるが、愛車のエンジンはLクランクというものらしく、このキットに対応するようである。社外品の耐久性に若干不安があるが、ものは試しと、このパーツを取り付けてみることにした。

 

<前提>
1978年式スーパーカブDX ('79年9月熊本工場製)
車体番号:C50-681****

 

<用意したもの>
武川「6Vシャリー用 スーパーストリートアウターローターKIT/バッテリー無しタイプ」 品番 SP05-02-0013
電線1mぐらい
エーモン4極カプラ
エーモンギボシ端子セット
クワ型端子(拾った)
シャリーK2型の配線図(探せばネット上にある)
C50KZ型配線図(なかったのでK3型で代用。たぶん同じっしょ)

 
   購入したパーツ。わかりやすい説明書がついてくるので、指示に従い作業すれば失敗する心配は少ないはずだ。
   交換時期じゃなかったのでエンジンオイルを抜きたくなかった&作業性向上のため、右に大きく傾けた状態で固定した。
   レッグシールド、左サイドカバー、チェンジペダル、ジェネレーターカバーを取り外す。
   更にフライホイールを取り外す。ロックナットを緩めるにはフライホイールを固定する工具が必要なのだが、ドライバー二本とめがねレンチで強引に外した。それでもフライホイール本体はどうに外れなかったので、このためだけに専用工具を購入。
   ようやくフライホイールが外れ、ジェネレーターが現れた。コイルに挟まれてコンタクトブレーカーが見える。この接点が高速でON-OFFを繰り返すのである。
   ジェネレーターをベースプレートごと取り外す。配線を全て抜き取り、上下2箇所のネジを緩めると取り外すことができる。ネジはノーマルドライバではおそらく確実に回らないので、インパクトドライバーを用意しよう。プレートも少々キツメに入っており、取り外すには苦労した。
   取り外すとエンジン内部が見える。ネジやらゴミやら異物が混入するとめんどくさいことになるので慎重に。当然オイルが漏れてくるので、車体を右に傾けるかオイルを抜き取っておかなければならない。オイル交換のタイミングでやるといいかもしれない。
   これがキットのプレート。
   取り外す時と逆にやれば問題無く入るはずである。寸法ピッタリに作られていてかなり入りにくいので、木片を当ててハンマーで少しずつまんべんなく且つ優しく叩き込んだ。
   フライホイールを装着。純正よりかなり小さく軽い。エンジンの性能にどう影響するだろう。エンジンレスポンスとかどうでもよくてただCDI化したいだけの自分には余計な要素かも。
   車体を縦に戻し、オイル漏れがないのを確認した所でジェネレーターカバーを戻す。かもめの特徴のフィンつきカバー。
   配線作業に移る。カブとシャリイ双方の配線図を取り寄せて色々と研究する。カブにしかない配線やその逆があったりするが、同じメーカーなだけあって基本的な配線色は同じだ。落ち着いて作業すれば間違うことないと思う。ただし、さすがにカプラの形状が合わないなどの問題にぶち当たる。キット(ジェネレーター側)はギボシだが、車体側はカプラだ。
   後にもとに戻すことを考え(元に戻すとは言っていない)、合わない部分はエーモンカプラとギボシ端子を使って変換ケーブルを作った。
   更に説明書に従い、点火コイルの交換やCDIの取り付けを行う。
   CDIは点火コイルの隣に配置するように指示があったが、ここはオリジナルに拘り、バッテリーボックスに配置した。配線の長さが足りないため、これも延長ケーブルを製作した。
   セットにはレジスターも入っていた。12V車には必要ないんじゃなかったっけ? あれ、勘違い? どっちにしろライトの常点灯が義務付けられた現在では必要ない部品だと思うが、入っているのでとりあえずつけておこう。純正品とは抵抗値が違うとの説明だ。取り付けは配線を入れ替えて適当に固定すればよい。ここはインシュロックでインテークパイプ(通称ぞうさん)の上に固定した。ちなみにこのインテークパイプは郵政カブ用である。純正品は胃袋と呼ばれる独特な形をしている。見てくれを気にせず機能だけ回復したければ新品で手に入る。KZ型はこの形状だったようだ。
 
本来ならこれらに加え、12V化の作業(電球類やレギュレーターの交換)があるのだが、このカブは既にキタコのキットで12V化されているので省略。で、運命の火入れ式である。キックアームをだし、思い切り踏み込む。なんてことはない。極普通にエンジンが回り始めた。アクセルを開けると普通に吹け上がる。軽量ローターのおかげで吹け上がりが良くなった。エンジン音も変わった気がする。ポイント式の時よりもエンジン回転がスムーズな気がする。事実、40キロぐらいまでの加速がとても楽になった。それより何より、日ごろのメンテが楽になったはずだ。反面、点火時期をわざとずらして遊ぶことはできなくなった。CDIの突然死の危険に晒されることにもなった。とりあえず、突然死には予備のCDIを備えておこう。

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