西の川林用軌道跡6


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 本日二度目の名古瀬谷である。時刻は13時40分。出発が午前10時と遅かったので、やや時間が押してきている。実は下見のとき川の水量が多く、ここで渡るのは難しいと考えていたため、この先は日を変えて瓶ヶ森林道(UFOライン)から下ってこようかと考えていた。それで焦らず急がず開始時刻が遅くなっていたのである。冷静に考えれば、下見を行った春の連休と正月休みの今とでは、川の水量は格段に下がっているわけで。まあ2時間位あれば何と終点まで行けるかな?


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 起点側の橋台はほぼ完璧に残っている。上から見ても、欠損がなく、しっかりと角が残っているのがわかる。


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 橋は残っているはずもなく。赤谷の橋以外にこの路線に橋は残っていない。対岸は植物の影に隠れ確認しづらい。やや荒れているように感じる。見えている石積み画像は橋台ではない。橋台はその左下。木が生えているところにあったはずだ。ここからでは木に隠れてその有無は確認できない。その先の軌道跡も確認できないが、これは木の陰に隠れているのではなくて、一直線に斜面を架け登っているのである。すなわちインクラインだ。路線図のとおり、川を渡ると第三インクラインに直結していた。


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 現に、橋台の手前は路盤が広くなっている。トロッコのすれ違いのためである。


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 上流側から見る橋台。一個だけ(上から7段目あたりの)角の石が取れているが、それ以外はほぼ完璧。西の谷の遺構では最も美しい部類に入るだろう。


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 正面から確認できなかったインクライン側の橋台も、この位置から確認できた。一応残っているみたいだが、そのすぐ後ろが崩壊している。明らかに氷漬けになっている滝が原因だろう。たくさんの石を積み重ねたこちら側と違い、終点側は大きな岩の上に載っていて、かなりコンパクトだった。


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 上流側に回り、真横から見た図。多分こんな感じの橋かな(チェンジ後)。


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 更に視線を左へ移すと、インクラインが始まる様が目に入る。ただ、勾配の変化が急すぎて緩和勾配が取れないので、このあたりは木のスロープでもあったのかもしれない。


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 幸か不幸か、崩落したところがいい感じに階段状になっていたので、下見のときと比べたら拍子抜けするほど簡単に対岸に行けた。ここから見る景色は格別だった。植生が少なく、起点側の橋台とそこに至るまでの道筋がはっきり見える。橋がない点を除けば、現役時代の光景にかなり近いのではなかろうか。ここだけ時の流れが違うかのよう。


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 そして後ろ側。今日三本目のインクラインである。


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 勾配の割に結構登りやすい。岩地だし、適度に凸凹があって足場が良い。植生はやや多めで視界はやや悪。


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 少し行くと、インクラインは浅い溝の中を通っていた。なんだか幅が狭く感じるのは自分だけだろうか。ひょっとすると、ここのインクラインは単線式だったのかな? 個人的には三線式の写真を見る機会が多くて、インクライン=三線式みたいな刷り込みがあるのだが、前にも触れたように、インクラインにも単線式、複線式、三線式など種類があった。この溝の幅は狭く、複線式はどうあがいても無理。三線式も厳しいだろう。そう考えると、第二インクラインも単線式だったのかもしれない。水門のところの幅は結構狭かった気がする。過去にいくつかインクライン跡を見てきたが、明確に単線だったと推察できるのは初めてかも。


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 右の斜面にへばりついてる白いのはみんな氷である。(かき氷にしたら美味いかな?)画像どういう凍り方をしたのか、なんとも形容し難い形になっている。冬だから凍りついているが、暖かい季節にはインクラインの中はちょっとした滝になるようだ。実は足元の地面にも結構氷が張っている。凸凹の多い地面なので歩けているが、結構危ない橋を渡っていたのかもしれない。


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 更にもう少し登ると、だんだん草木が少なくなってきて見通しが良くなってくる。


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 すると、木々の間から前方に何かが鎮座しているのが見えた。どう見ても進路のど真ん中を塞いでいる。それはコンクリートの塊に見えた。巻き上げ機の台座でも残ってるのだろうか。しかし終点にしてはまだ大して登ってないはずだが。


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 ・・・いや、違うか。橋脚だな、このインクライン、斜面を横断するように斜めに設けられている。それで途中で谷とぶつかっていて橋で越えていたようだ。これも自分にとっては初めてのパターンだ。橋脚の頂上側が斜めなのはなんでだろ? 橋桁がずり下がってこないように突っ張るためかな。


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 橋脚は二基あった。インクラインなのでかなりの高低差がある。その上には石積みの橋台が残っている。てっぺんは水に削られて無くなっているいる。周りの白いのは全部凍った滝。起点側の橋台は確認を忘れた。


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 ちなみに方っぽの橋脚は倒壊寸前。後どのくらいこの姿を保っていられるか予想できない。倒壊したらどこまで転がっていくだろう。


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 橋の周りは地形が急峻で、斜面は氷漬けになっている。流石にここからはインクラインを外れて歩くしか無い。幸い、すぐ横を山道が通っている。地形図にない道だが、インクラインと並行しているようだ。ピンクテープがあるので造林作業のための道だろう。


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 とちゅう橋脚を見下ろす場所があった。


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 その先、植生で見にくいが、凸凹の少ないなめらかな帯状の地面が山を駆け上っている。


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 道は途中で二手に分かれていた。片方は今歩いてる道の続きみたいな感じだ。もう一方は緩やかな道で、方向的にインクラインと交差している。どっちを選んでもインクラインの頂上側に出られるが、よりインクラインに近いだろうこっちの道を進んだ。そしたら程なく橋の上方に出る。


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 ここからインクライン跡に復帰できるかな。でもダルくなってきたのでそのままの道を進んだ。地面もいつしか土に変わっている。


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 それから数分の後に上部軌道が見えてくる。


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 まずインクライン側へ。すぐに石積みで守られた切り通しになっている。


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 ここも石積みは山手のみ。麓のアレみたいに派手に崩れてないのは良い。切り通しの先は空が見えている。そこがインクラインの上端だ。


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 インクラインの端から麓を見る。頂上側は意外に灌木が多いな。回り道してきて正解だったかもしれない。インクライン跡には植樹されておらず、樹木のない帯状のスペースが麓まで続いている。


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 ちなみに分かれ道の片方の道はここに繋がっている。左に踏み跡とピンクテープが見える。帰りはこっちを通った。更にこの道を道なりにずっと下って行くと、"ノーサンキュー"の吊り橋に出る。


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 終点側を見る。切り通しは幅が狭い。平坦に移っても少し単線のまま進んでいたようだ。


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 切り通しを抜けると少し幅が広くなっている。ここで行き違いをしていたようだ。これから先、上部軌道となる。




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