竿谷橋

新寒風山トンネルの開通はまだ我々の記憶に新しい。それは、このトンネルの経済効果や無料一般道において国内最長を誇るという話題性など、他のトンネルとは一線を画するものがあるからだろう。
 さて、新道の開通劇に飲まれてほとんど見向きもされていないが、この県境部分の車道は以前にも一部、ルートが変更された部分があるのをご存知だろうか?
   件の場所は、西条市側の麓の方である。空中写真を見ると、遠回りする別のルートが有ることがわかる。しかも、途中の斜面で砂を流したように途切れている。このことからルートが切り替えられた理由も大体察しがついた。
   西条側より旧道に入ると、ものの数分でそこにつく。昭和期からハンドルを握っている年季の入ったドライバーなら、ここで起こった出来事を覚えている方もいるだろうか。そうでなくとも、線形の不自然さからその事実に気づいた人もいるかもしれない。なにせ直角である。それだけでなく、橋自体も新しく、ほかと比べてかなり浮いているのだ。
   銘板には新竿谷橋とある。竿谷はこの下を流れる谷の名前だ。"新"とつくからには旧橋もあるのが普通だろう。
   決行は三月某日となった。まだ山陰には残雪が残り、どちらかと言えば寒い日だった。旧道は既にかなり侵食されてきており、半分ほどの広さに縮まっている。おまけに不法投棄されたガラス片がそこかしこに散らばっており、何者もの侵入を拒んでいた。
   しばらく行くと、路上に多量の岩石が積もっていた。不自然な、おそらくは人為的に運び込まれたであろう土砂は、この道路が廃道であることをこれ見よがしに主張していた。
   コレが国道の成れの果てである。ここを何台ものトラックや乗用車が走り抜けていたのである。
   足場の悪い斜面をそろそろ進んでいくと、前方に大きなコンクリート壁が鎮座しているのが見えた。
   境界線。あの脇は崖になっていて、道路は完全に通せんぼされている。
   まあ、コレを見れば、その理由もよく分かるだろう。
   道なんてなかった。にわかに信じがたいが、写真のこの場所にはAS舗装された車道があったはずなのだ。もっとも、ここが道路を放棄することになった原因ではない。原因はもっと先にある。
   この沢のすぐ下流は滝になっている。昆布のように波打ったH鋼が散らばっているのだが・・・・・。
   ・・・・・・・!?
   正直、ここまでひどい事になっているとは予想していなかった。自然の侵食力はすさまじい。
   画像中央部分、巨石の転がるそこが路盤だったところだ。
   川の流れに侵されなかったところはどうにか残っている。道路の断面がよく分かる資料だ。
   行く先に目を向けると、どうにか旧橋は残っているようだ。
   しかし、手前の取付部はすっかり土砂が堆積しており、雑木が生え出ている。
   その中には、おにぎりの支柱だったのだろうか、白い鉄柱が残っていた。
   やがて橋の袂に辿り着いた。土砂が厚く堆積しており、橋を見下ろす形になっていた。
   橋自体もずいぶん短い。右岸の取り付け部分は完全に洗い流されている。
   銘板があったと思われる部分は何故か取り外されてぽっかり穴が空いている。お陰で橋の正確な名前はわからないが、新橋が新竿谷橋なのでこちらが竿谷橋と呼ばれていたのだろう。
   橋を頂点にヘアピンカーブになっていたため、橋自体が急な曲線を描いている。
   橋を渡った先、右岸の道は崩壊によって埋没している。実は来る途中から既に見えていた。これがこの区間の放棄されたコトの主原因である。昭和56年頃、この斜面が大崩落を起こし、国道を土砂に埋めてしまったのである。
   橋上から下流を見る。左手に今まで歩いてきた道、右に行く先。右と左の道のギャップが大きい。垂れ下がったガードレールが痛々しい。
   大きなクラックの入った擁壁。この上に道路が通っていたはずなのだが、崩落の土砂によって完全に埋没している。実は平成16年頃にもここで大崩落を起こしており、この上を通る旧道が一時閉鎖されていた。その時の土砂も混ざっているのかもしれない。しろさん情報では、56年の崩落の際は旧道上で多数のブルが地面を均していたそうだ。ただ、道路は仮設橋からそのまま新橋へ移行したらしく、旧道のブルは二次災害防止のための地均しでしかなかったようだ。・・・・そういや、さっき谷底にキャタピラが落ちているのを見たなあ・・・・。
   下ばかり歩いていてはもうすぐ滝壺に落ちてしまうので、どうにか登れそうな所を這い上がった。この間の写真は少ない。道中にはやはり、大きくひん曲がったH鋼が多数散乱していた。ひょっとしたら、56年の崩落の際に設置されたものかもしれない。だとすると、16年の崩落でひん曲がったのだろうか。
   この付近から新橋まで見通せる。もう既に結構な高低差が生じている。
   間もなくガードレールが現れ、埋没していた路盤が顔を見せた。
   道路敷がまっすぐ土砂の山に突っ込んでいる。

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