白髪林用軌道9

 2013年1月、隧道探訪の掲示板で驚くべき事実が明らかになった。本線にはまだ続きがあったのである。実はというと、自分自身坂瀬までは行き、川に橋台が残っているのを確認していたため、支線か何かがまだ伸びていたのだろうとは思っていた。ただ、資料が不十分だったのでその先の調査を断念しいてたのである。では何が驚きなのかというと、支線だと思っていたのが本線だったことである。写真は冬ノ瀬の土場を出て奥へ続く軌道跡、もとい県道である。やはり、車道化されてしまったせいでめぼしい遺構はなくなってしまっている。
 たまに小橋の下を覗くと、古い石積みが見えるぐらいである。
 しばらく進むと橋がある。竜王橋と言ったと思う。
 橋の上から上流に目をやると、そこに当の橋台が残っている。比較的見やすい位置にあるため、数年前の調査でも気付くのは簡単であった。
 起点側の路盤は良い状態で残っている。
 橋台も崩れず状態は良い。
 終点側も見え方が妙だが、比較的良好である。
 終点の橋台から起点の方を見る。
 同じところから終点側を見る。
 路盤に鎮座しているのは神社のようだ。あまり管理は行き届いていない。
 楽しい寄り道だったが、また県道に重なって面白くない道中に戻る。
 またしばらく行くと、伐採されたゆるい斜面に出る。数年前の調査ではこの付近まで来たが、付近の勾配があまりにもきつくなっていたため、レールがどのように繋がっていたのかが分からず、調査を断念していた。分からないわけである。軌道はここでヘアピンカーブを作って高度を稼いでいたのである。
 ただ、辺りは車道化のドサクサに紛れて様子が一変しており、路盤を見つけられない。しばらくウロウロした後、、カーブミラーの後ろに僅かばかりの石積みが残っているのを見つけた。これはおそらく折り返したあとの二段目の部分だろうと思う。
 なくなった路盤を頭に描き、当たりをつけた場所をよじ登ってみた。
 久しぶりにまともな路盤を見た気がする。
 間もなく尾根先を回る。第二ヘアピンである。
 尾根の上は切り通されている。
 その先は伐採の後で藪化しており、行くに行けない状態になっていた。もう少し行けば県道に重なってしまう。
 またしばらく県道を進むと、竜王林道との分かれ道に出る。
 この時点で軌道は、車道より幾分低いところへ降りている。いや、車道の方が登っていると言うべきか。近くの橋の上から谷を見下ろすと、橋台が見える。はずなのだが、写真では判別できなかった。
 谷へ降りてみる。終点側の橋台である。損傷が激しく、ただの土の盛り上がりになっている。
 起点側の橋台については、車道化にあたって完全に消え去っていた。そのため分岐地点もはっきりしなかった。
 橋台の先は、久しぶりにはっきりそれとわかる地形が残っている。
 浅い掘割、と言うよりは溝が続いている。
 少し行くと、いくらか開けた場所に出る。ヘアピンの跡である。
 外側には低い石積みが弧を描いている。
 下から見ると一目瞭然である。
 ここの広場には、県道から車道が降りてきている。ヘアピンの二段目は車道化されたようだ。
 車道化の際に、県道と繋げるために土を入れたらしく、途中から勾配がかなりきつくなっている。
 二段目は車道化されてその痕跡を尽く無くしている。県道の橋は、元々軌道の橋が架かっていたのかもしれない。その後は予想だが、竜王林道に突っ込んでいたのではないかと思う。
 第二ヘアピンが何処かにあったはずだ。おそらく林道にあるヘアピンカーブがそれだと思うが、はっきりそれとわかる痕跡はなかった。そのまま林道を少し進む。
 やがて車道より低い所に平場が出てくる。
 林道造設の際にいくらか壊されているが、少し歩くとほぼ正常に戻る。
 しかし、それも僅かなあいだである。県道に無残に削り取られ、ぷっつり切れていた。
 右上から出てきた。
 ヘアピン二個と軌道の三段分の標高を一気に駆け上がってくる車道は、写真で見てもかなり勾配がきついことがわかる。
 このカーブを境に勾配が緩くなっている。ここからが本来の路盤だろう。
 それからまた、かなり長い間車道を走ると、どこかで見たような鉄のオブジェクトが現れる。土場の門である。軌道はこの広場が終点だったらしい。
 今は利用されていないのか、何もない広場だった。
 敷地の外れには朽ちた建物。
 敷地を取り囲むガードロープは廃レールがふんだんに使われていた。

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