西の川林用軌道跡5
車道から外れて斜面をゆく。前述(前ページ)の通り、工事か災害かわからないが、斜面は大きく荒れている。大きな木がないので雑多な低木が生えていて、見通しが悪く前進がしにくい。この状態でぶっつけ本番で軌道跡の続きを探すのは非効率で不確実だと思ったので、事前の下見で続きの軌道は発見済み。それと、途中でGPSがバッテリー切れになってしまい、しばらくログが取れていなかった。なのでこの回の地図は大部分が想像で補っている。
斜面に入って程なく平場がある。軌道跡だろうか?
悩む間もなく、すぐに途切れてしまった。手前も見てみたが、やはり残っている面積が狭く、ちょっと判断しかねるかな。そもそも幅がだいぶ広かった気がする。地すべりで上の車道が滑り落ちてきたんでねえの?
斜面の途中にかなり大きな岩が鎮座していた。昔からあるのかな? 目印に丁度いい。この高さを目安に歩くといい。画像は振り返って撮っている。
こちらが進行方向。藪藪&藪。相変わらず斜面があるのみで、平場が見当たらない。前のページで出した
空中写真では、ヘアピンの突き当りからこの上の方に向けて枝道が伸びているように見える。削った土を落とし込んできたりとか、軌道跡にいくらか影響があったのかもしれない。
やがて荒れた斜面の中に石積みが残っているのが見つかる。軌道の遺構である。気がつけば周囲に木が増えている。また森の中に戻ったようだ。繰り返しになるが、軌道跡の続きは下見の段階で発見済み。なのでこの遺構も発見済み。そのときは「残っているもんだなあ」ともちろん感心したが、今はもう感動を先取りしている状態なので、特に思うことはない。強いて言うなら、「またここに来られてよかったなあ」とかかな。
ぽつぽつ遺構が現れ始めたものの、荒廃もまだ続いている。所によって石積みがあるのに平場がないため、上から崩れてきた土砂で埋まったのだと思っていたら、盛り土が崩れて山手の石積みだけが斜面に取り残されたのだと気づくような場面もあった。
車道から外れておよそ25分。久しぶりにまともな道が出た。実は途中で斜面を下り過ぎてしまい、20分ほど道に迷ってしまった。下見の意味ネー。迷わず真っ直ぐ来られれば、そんなに大した距離ではない。
石積みの上に上がると、結構な量の落石が散らばっていた。それでも足元に平らな地面があるというのは良い。撮影方向は逆。
進行方向。奥の方はここよりは石も少なくて歩きやすそうに見える。
少し行くと大きな谷に出た。
谷はやや深め。橋は残っていない。赤谷の橋が残っていたのは登山道の一部だったこともあって、イレギュラーだったようだ。
起点側の橋台は損傷が激しい。手前の石積みだけが残っている状況だ。
終点側は完全に崩壊して残っていない。もしくは岩地だったので橋台は作らず直接地面に置いていたパターンかも知れない。余談だが、この付近はかなり寒いらしく、川沿いの斜面が凍結していた。
終点側より起点側を望む。
同じ場所から進行方向側を見る。すぐ先で道が二手に分かれていて、登山道の案内看板がここにもあった。今は荒れているこの道も、昔は登山者のリュックが連なる風景があったのかもしれない。
左の急登はシラサ峠への古道である。看板がないなと思ったら落下していた。この道は今の地形図にはないが、旧版地図には描かれている。西の川の集落の人達は、この道を通って本川へ行っていたのだろうか。
右の道は、看板には名野川越と書いてある。野の字がカナだが同じだろう。この道は今の地形図はもちろん、旧版地図にさえ載ってなく、全容は不明。ただ、シラサ峠を経ず直接に名野川越に至る道は、確かに存在したようである。
軌道跡は右である。左は急坂なので言わずもがなだが。右の道を進んでいく。
分岐から間もなく、小崩壊している。どうやら斜面の上から水が流れているようだ。冬でも完全に枯れることはないらしく、この冷え込みでカチンコチンに凍結している。親切にも崩落の上には丸太が渡され、通れるようになっている。登山道が生きていた頃からのものなのか、だいぶ苔生している。
崩落箇所は石積みになっている。元は水抜き用の溝なり穴なりがあったと思うが、放棄されて久しく、削られるがままになっている。 下にはインクラインでいくらか標高を稼いだはずなのに、もう名古瀬谷が迫ってきている。
崩落の向こうは川に沿ってゆるく左にカーブしている。左は垂直な岩の壁。巨大な岩塊を削って道を切り開いている。途中、小さな切り通し(ほとんど溝)が連続してる。
もう少し行くともう少し大きな切り通しが残っていた。
大きな崩壊もなくきれいに残っている。
振り返ってみたところ。溝の深さは完全に背丈より高い。そこそこ大きな切り通しだ。
そこを通過すると、またも小規模に崩壊していた。その先さらに大きな切り通しが見える。
近づいてみると、法面がかなり大掛かりに石積みされているのが見えた。残念ながら入り口付近が派手に破れて土砂が流れ込んでいる。
石積みは山手の方だけだったようだ。あるいは川手の方は崩れて失われたのかもしれない。深さは手前のと同程度かそれを上回りそうだ。それよりも長さが結構長い。
奥側から見たところ。背後が明るいのでシルエットがくっきり。ダメージの少ない右側と風化が進んだ左側で結構壁の角度が違う。そして崩れた土砂で通路が狭められ、窮屈に感じる。崩れた土砂の中にもいくらか大きめの石が混ざっていた。ひょっとしたら川手の方も、全面ではないかもしれないが、いくらかは石積みで保護されていたのかもしれない。
切り通しを抜けた。流石に切り通しは打ち止めのようだ。
終点側から切り通しを見る。こちら側にもちょっとした崩壊があって、一段上から見下ろす形になっている。大雨があると水たまりになりそう。
段々と谷の幅が狭まってきたような気がする。正面には対岸の斜面が壁のようにそそり立っている。第三インクラインも間近。
その前に吊り橋が架かっていた。無論、軌道とは関係ない。軌道もいずれ左岸に渡るが、もう少し奥の方で渡る。
営林署の職員が手作業で架けたのだろうか。丸太を2本渡し、板を打ち付けただけの簡素な橋だ。ワイヤも細い。この下にも腐りかけた同じものがあるので何度か修繕されているようだ。といっても最後の修繕からだいぶ日が経っているようだ。丸太は表面が朽ちて細くなってきているし、ワイヤーもダルンダルンになっている。「通行止め」とは書かれていないが、ぱっと見で既にヤバい。対岸に渡る手段に使えないかと思ったが、これはノーサンキューだ。写真の色味が違うのは春の下見の時の画像のため。
吊り橋を通り過ぎると一瞬植生が多くなった気がするが・・・
それはすぐに収まり、やや視界がクリアになったかなと思うとその先には大きな橋台が残っている。