伊尾木林道仙谷線 その5



 仙谷川を渡るのもこれで最後になるはずだ。久々に谷の深いところと交差している。対岸には続きが見えているが、写真だとわかりづらい。もっといいカメラに変えるべきか・・・・。対岸の路盤は下流方向に続いている。要するにヘアピンカーブだということ。麓から数えて11番目のヘアピンであり、終点から2番目のヘアピンでもある。


 谷が深く、その場所では渡れなかったので、来た道をしばらく戻って傾斜の緩い所をおり、谷底を歩いてきた。橋台が遠くに見えている。

 絵になる一枚を狙ってみたつもり。いざ見てみるとそうでもない。
足場が悪かったんや・・・。


 どう上ったのかよく覚えていない。次の写真は起点側の橋台を写していた。かなりしっかり形が残っている。


 橋台に隣り合って切り通しが残っている。


 結構奥地まで来ていると思うが、軌道の状態は依然良い。終点までこのまま行けそうか・・・。


 軌道跡の上に規則正しくスギが植わっている。林鉄跡を歩いているとたまによく見かけるんだよね。偶然こうなるんだろうか、自然に戻すため、人為的に植えたのか??? スギは種で増えるらしく、倒れた枝から落ちた種が一直線に発芽したのかもしれない。そして根本を見ると、その部分だけ石積みが崩落している。根っこが石垣を小突いたんだろうか。スギの木の根は浅く、表面の土砂を剥がすように広がるらしい。


 そのすぐ後ろに小さな谷が流れており、橋台が残っていた。


 起点側を見る。


 その後ろ。不気味な回廊が続いている。


 光が届かず、薄暗い。こんな所でも地籍調査のための蛍光テープが巻かれており、意外と自分以外の訪問者がいる事を知った。


 回廊は180度回って先程の谷の上に来た。最終(第12)ヘアピンを回ったようだ。この先は終点まで一直線なはずだ。
 ここの橋台は崩壊したのか、元々暗渠だったかで見当たらなかった。  


 反対側から見る。


 最終チェックポイントとも言えるヘアピンを通過した。時刻は午後二時半になり、帰りの時間を考慮するとあまり余裕があるとはいえない時間となった。やや足を速め、ゴールまで一気に進むことにした。

 予想外に、ゴール直前に大きな遺構があった。地形図に描かれていない小さなな谷が流れていて、橋台が向かい合わせに残っている。損傷が少なく良い状態で残っている。急曲線を描いており、事実上のヘアピンカーブだが、ここではあくまで標高を稼ぐための方向転換をヘアピンと呼んでいるので、数には入れていない。


 

 主だった遺構は以上である。あとは終点を攻略するのみとなった。


 終点間際に若干の難所があった。


 比較的長い直線。基本的に地形に逆らわない林鉄で、長いストレートがあるのは珍しい。


 斜面に戻った軌道跡。同時に森が後退し、空が広くなった。


やがてそこは広場に変わった。一本杉のおまけ付きである。間違いなく起点であろう。
広場が広場のまま残っているのに驚いた。人の手で切り開いた所は、人の手で森に戻してやらないと、数十年では中々もとに戻らないということだろうか。

 広場を通り越して少しだけ川を遡ってみたが、この先に軌道が続いていたような痕跡は確認できなかった。

 奥から広場を見る。多少の石垣が残っていた他は、レールや枕木、建物の基礎と言った物は見当たらなかった。

 石垣以外に広場で唯一見つけた人工物。水パイプだろうか。石膏のような白くてカサカサした見た目である。
気になってググったところ、石綿セメント管なるものの存在を知った。戦前から昭和の中頃まで盛んに用いられていたらしい。目の前にあるのがそれかなのか断定できないが、この路線の古さを考えると、そういう可能性もあるかもしれない。

 斜面を見上げてみる。地形図上はこの上方に林道が走っているはずなのだが、ここからはその姿を捉えることはできない。それもそのはずで、ここからはまだ100mを越える標高差がある。傾斜角もかなり急であると思われる。当初は林道を帰り道として使うことも検討していたが、それをしなくて正解だったようだ。行ったら帰ってくる作戦は間違いではなかった。

 それから間もなく下山を始めた。時刻は午後2時50分頃だった。出発したのが朝の8時だったので、行程は往路が約7時間だった。
 1時間半ほどで1ページ目のC地点(最初の橋台を発見したところ)まで帰ってきた。一度歩いて登り降り出来そうな地点を把握していたこと、さらにヘアピン部分をショートカットし、道中一切写真を撮らず黙々と歩いたことで、この快足ぶりとなった。なお、左の地図の左上に表示されている矢印のある窓のようなアイコンをクリックし、表示されたメニューから"帰路"の部分にチェックマークを入れるとオレンジ色の線が地図に追加される。これが帰り道のルートである。この頃には大抵の企業の終業時間である午後5時が近づいていたので、作業員らも引き上げているだろうと思い、堂々と林道を歩いて帰ってきた。


 林道から見上げると橋台はこのように見える。林道は軌道跡を踏襲しているのだが、この部分だけは川を渡るために低くなっているので、谷底のかなり低いところまで下りてきている。


 そこから更に少し戻った所。どうやら橋台をひとつスルーしていたようだ。ここは常時水の流れるような大きな谷ではないため、その存在は全く予想していなかった。さらに起点側のみ残存しているめ、往路では存在に全く気づけなかったようだ(ヒーヒー言っていたし)。最後にこんなサプライズを用意しているとは、中々味な真似をするものだ。


 今回の作戦は8時間ほどで完了した。伊尾木の支線群の中で屈指のヘアピン連続地帯だったが、終点の景色はただ山深いばかりで、特筆すべき点はなかたように思う。取り敢えず伊尾木林道の完全制覇に一歩近づいたので良しとしよう。



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