伊尾木林道仙谷線 その4



 "ドッコイセっ"と河原に降りると、そこには小さな滝が注いでいた。そういや、ずっと水音がしていると思ったんだ。滝としては小ぶりなもので、独り占めするにはちょうどいいサイズだが、軌道にとっては大きな障害物だ。ここで川を渡ると、また下流方向に引き返している。つまりここが第7ヘアピンだ。ここの河原でレールを一本見つけた。


 右岸に移り、なおも標高を上げてゆく。目指すは第8ヘアピン。


 上段の軌道はかなり早い段階で確認できる。まだ遥か頭上だが、行き先がわかっているというのは安心感がある。


 第8ヘアピンまではさほど時間はかからないはずだ。あるいは、上段との高低差から所要時間を無意識に算出していたのかもしれない。とにかく、さほど"ヤキモキ"する事なく、斜面にナナメに走るラインを正面に捉えた。


 ヘアピンの手前にも平地があり、何らかの建物の基礎部分と思われる構造物が遺っていた。民家跡か事業所跡か判断できるほどの材料はなかった。木材の集積場所だったのかもしれない。


 一旦斜面の下に入り上段の軌道跡が見えなくなる。


 しかし、延々と右にカーブしていることでそこがヘアピンだと気づく。ここが第八ヘアピンである。


 崩落も少なく、どちらかと言えば保存が良い状態といえるだろうか。


 上段の軌道沿いにも所々に平地があった。軌道はその中を、石積みの築堤で進んでいる。


 崖下に小さくなる下段を見ながら行くと、やたらと平坦な開けた所に出た。


 広い。この山奥にこれほどの平地があるとは。
地形図を確認すると、ちょうどこの付近の等高線が開いている。拠点を設けるにはちょうどよい場所だ。事業所跡である可能性が高い。

 

 その根拠を探し求めたが、そういった遺留物は酒瓶の一個から湯呑みの一個に至るまで、綺麗さっぱり見つからなかった。しかし、小川線でも見かけた謎の水槽(?)を発見した。ということは、ここはやはり事業所跡なのだろう。


 少し離れたところには少量のレンガと、台状の何か。そして地面に開いた穴を見つけた。正体は全くをもってワカランが、数少ない人々の活動の痕である。


 痕跡の少なさに急速に興味を失ったので先に進むことにした。残り時間もそろそろ気になり始めている。

 途中幾つか切り通しを抜ける。この切り通しは川の内側にあって、深く彫り込まれており、先が見えない急な曲線を描いている。



 切り通しを抜けると不穏なものが目に入った。石積みが途切れている。断面が歪になっているので路体の崩落が起こっているようだ。上方は切り立つ岩場になっており、高巻きには困難が伴うだろう。沢歩きをしようにも、谷底まで地味に深く、素直に下りられるかわからない。どちらを選ぶべきか、今から気が重い・・・・


 端まで行ってみると、思惑外れて対岸に平場が続いているのが見えた。ここに橋が架かっていたようだ。対岸の橋台は崩れてしまったのか見当たらない。


 幸いにも、橋台の横が小規模な滝になっており、川床が数メートルほど高くなっていた。足場も豊富にあり、登り降りには大した苦労はなかった。谷底に降りた所で左の写真を撮った。角が欠けてしまっている。遠くから見たとき、この部分が見えていたようだ。


 対岸に移ったが、そのすぐ目の前で道がなくなっているという予想外の光景に戸惑った。実は起点側を見ているとかいうボケはかましていない。


 この右側に見える岩場を避けるためだけに右に寄ったらしい。視線をずーっと右に動かしていくと・・・・・



 ・・・・・・目と鼻のすぐ先に次の橋台が待ち構えている。右図のようにとんぼ返りしている。


 少しのあいだ周囲を見回していたが、レールが何本も落ちているのに気づいた。
初めはただ「レールが落ちてるな」とだけ思ったが、どうもひと繋がりになっているようだ。
しかも、両側分あるようだ。それは橋台の上の方から伸びている。

 これは鉄砲水などの自然災害で橋が落ちてしまい、千切れたレールが下流方向に流されたのだろう。
後年レールを回収する際、埋まった部分を掘り出せず(あるいはめんどくさくして放置して)そのまま残っているのだろう。
そう言えば、第7ヘアピンの下でレールを見たが、あれもここから流れていったのかもしれない。

 

 対岸に移り、橋台の上に立つ。レールの行き先が気になるが、橋台のすぐ横まで来ていた。よく見ると継目板がきれいに残っている。ここで、ボルトを外し接続を解除したようだ。


 進行方向を見る。大きめの石が目立つ。増水するとここまで水が来るのだろうか。蔓っぽい木も絡み合い、歩き難そうだ。


 が、よく見ると対岸にさらに別の橋台が残っているのを見つけた。今歩いてきたところを見ている、とかいうポカはやらかしていない。どうやらここもヘアピンの跡だったようだ。9番目のヘアピンである。


 ヘアピンそのものはこれまでに見てきたものと同じようなもので、特筆する点は特にない。先へ進む。


 しばらく行くと、左手の頭上に路体の石積みが見えた。第10ヘアピンも近いようだ。


 はじめは見上げるような位置にあった路面も、数分歩くと自分の頭の位置まで降りてくる。


 到着した第10ヘアピン。少し埋まっている。やはり特筆するような点はない。ありふれたものだ。


 ヘアピンを抜けると、左下に今まで歩いてきた道を見つつ上ってゆく。
今日何度か見てきた景色なので、少し飽きている。


 途中、いくつか切り通しを抜ける。


 前後の軌道の状態は良く、この部分は歩きやすい部類に入る。


 しばらく行くと、大きな切り通しが現れた。急曲線に対応する幅の広い切り通しである。尾根先を回るわけでもないのにRがキツく、しかも川手の方に曲がっているが・・・・。



 また渡っている・・・・・



前のページ  次のページ(まだよ)


サイトトップに戻る  廃線メニューに戻る