安居林用軌道安居線13


 現在地はこんなところである。下部の見える線は車道である。軌道は遥か上方を通っていた。比較対象がないため、高低差を掴みづらいのだが、手前にある車道の切り通しは、車を三台積み重ねたぐらいの高さがある。それよりさらに1.5倍ぐらい高いところに路盤がある。
 A
 清々しく丸見えである。足元の斜面にはコンクリートが吹きつけられているため、どこよりも足場はしっかりしているが、斜面から生え出た灌木が通りかかる者を突き落とそうと頻りに手を伸ばしてくるのだ。眼下に遮るものはなく、このため余計に転落に対する恐怖を感じやすくなっている。
 バキバキボキボキと邪魔な枝をへし折りつつ、少しずつ進路を開拓した。この斜面に15分ほど費やした。
 進行方向。少し崩落しているが、難所は過ぎ去ったようだ。
 B
 ↑からの5分後。ちょろちょろと流れる小さな谷が横切っている。水量の割に深く切り立っており、当然橋も無くなっていて向こうに行くことができない。
 元来た道を引き返すのは非効率なので、そのままこの谷を降下した。残雪のある湿った地面はすごくよく滑った。
 ホンの少し先に橋がかかっている。
 C
 この橋の上からは二本の滝が合流する合流瀑を見ることができる。安居不動の滝と呼ばれている。何故か全体像を写した写真がない(謎)。これは向かって左側。落差の大きい方の滝。
 これは右側。なだらかな滑滝となっている。この谷を歩いて登る。
 実は、一枚だけ全体像を写した写真がある。レアな冬の光景だ。「冬でも頑張って探索しちゃうぞー」っと意気込んで安居へ来たら大雪だった。その頃には林道は通行止めになっていて、雪深い林道を延々と歩いてきた。当然探索どころではなく、これが同じ高知なのかと唖然としたのもいい思い出だ。おかげで美しい冬の幻想風景を堪能できた。←ヤケクソ(冬の雪山など罰ゲーム以外の何物でもない。良い子のみんなは天気予報を調べて無理のない計画を立てて来てね
 最深部の調査はいくらか気候の緩んだ2月に行っている。右手の滝の上部は"ナメ"と呼ばれる傾斜のゆるい岩肌を水が流れている。歩いて登るのも、さほど苦にはならなかった。
 "ナメ"の奥にも小規模な滝が流れていた。ここまで足を踏み入れるのは滝マニアぐらいだろう。
 D
 5分ほど歩き平場に登り詰めた。こんなにわかりやすく平場が現れるのも奥安居では珍しい。
 これも5分ほど歩くと反対側にたどり着いた。
 30分ぐらい前にあそこに立っていた。
 それではラストに向け、スパートをかけよう。
 終点が近づき、道は急速に粗末になってゆく。獣道のよう。
 E
 そしてこの斜面で道は終わっていた。
 その奥には滝が見える。地形は周囲を包み込むようになっており、袋小路のようになっている。この先、どこへもレールを伸ばせそうにはないし、SNAKE氏のサイトで公開されている詳細図の終点とも一致している。ここが終点と見て良いだろう。安居林道攻略達成の瞬間である。
 終点より振り返り撮影。終点にしては積み込み場のような平地がない。この先どこへもレールを伸ばせそうにはないのだが・・・・。
 川にはレールが一本埋まっていた。ここまで軌道が伸びていたことは間違いない。
 遠足は家へ帰り着くまでが遠足である。恩師もそう言っていた。幸いにして、斜面のすぐ上部を筒上山への登山道が走っている。そこへ抜ければ楽に帰れるだろう。
 意外にも、最終点から登山道へ抜ける杣道が存在していた。
 F
 そして登山道を下ると、見た目がヤバ目な廃屋が現れた。
 うーん、傾いてますなあ。
 酒瓶が多数。
 それに水筒に・・・・
 ノコギリ・・・・
 そして業務用殺鼠剤。登山者向けの山小屋には見えないだろう。これはきっと事業所跡だ。
 一際異様なのがこの落書きだらけの壁だ。登山者が記念に書き残したものだろう。日付が昭和なのに恐れいったが、それ以上に住所や氏名をおっ広げにしてあるのに驚いた。検索してみると、どうやら住所は実在している。「お手紙ちょうだい」と書かれた落書きもあったが、今から送ってやったらどんな反応をするだろうか(笑
 よく見ると、落書きは登山者のものだけでなく、署員のものと思われるものも残っている。

他の連絡は事業所経由で 事業所はこの電話機で呼べます
注意  呼び鈴故障ですから当分の間は朝六時と六時三〇分(夕方と一緒)に受話
三十九年十月二十三日ネズミ駆除入山
   →十月三十日下山

などなど・・・・。一番新しい物は、昭和42年12月の日付が入っていた。
 これはヒューズかな? 真ん中の丸いものはブザーに見える。「呼び鈴故障ですから」というのはこれの事だろうか。
 屋外には派手にぶっ壊れた小屋がある。風呂便所跡だろうか。
 登山道は程なく車道に出る。ここから筒上山や手箱越へ行くことができるのだ。
 さて、この頃は車道が崩壊しており、通行できなかったのだが、驚いたことに登山道手前の広場に一台の四輪駆動車が止まっていた。登山中に車道が崩れて閉じ込められてしまったようだ。バイクなら解体して運んで再組み立ても出来なくはないが、車では無理な話だろう。全く気の毒な話である。その後、ある方のブログにて、ナンバーの外された綺麗なSUV車の目撃情報が上がっていた。間違いなくこの車だろう。(ちなみに麓の方にももう一台止まっている)。回収を諦めたわけではないだろうから税金対策だろう。動けない車に税金を払い続けるのもアホな話だわな。
 2013年までは路面はまともな状態で、私も自動車とバイクでそれぞれ一回ずつ不動滝前まで走行している。それがこの時はこんな有様になっていた。いくら四輪駆動車といえど、リフトアップされた柔軟な足回りを備えていないと突破するのは無理だろう。
 どのみちこの崩落で詰みだが。復旧はいつになることやら。

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