伊尾木林道小川線跡3


 第二隧道が姿を表した。マフラー巻き氏らの調査から10年、自分にとってはプレ調査以来三年ぶりの再会だ。変わらない姿に少し安心感を覚えた。
 ここは沢渡りをするしかないが、橋台から見下ろす谷底は中々高さがある。
 谷底から見上げる第二隧道の坑口。橋から直接トンネルに突入するこのスタイル。ありふれたトンネルにはない風格というものを感じないだろうか。
 起点側の橋台。半島状に突き出した尾根にちょこんと載っているのが、線形のダイナミックさとアンバランスで可笑しい。
 上流側から。プッと短く警笛を鳴らし、トロッコが飛び出してくる。そんな情景を心に描いた。
 さて、トンネルには右下の斜面から近づけそうだ。
 井戸から這い出る貞子の気分でよじ登った。
 隧道内から橋台を見る。トンネル側の橋台は、自然の岩を利用している。
 終点側坑口。この第二隧道は大体中間地点に存在するため、探索続行の可否を判断する大事なターニングポイントに設定していた。現在時刻は午前10時50分。4時間弱歩いたことになる。距離は8キロ前後と思われる。
 後半戦に突入する。今現在が11時として、終了は午後4時を予定している。5時頃までは陽があるため、状況によっては1時間の延長が可能だ。つまり、最大6時間で7キロ歩けばいいわけだから、この探索、ヨユーでクリアできそうだ。(フラグ)
 ちなみにコレは小川川を挟んだ北の斜面を見たものだ。この斜面の頂上の稜線には果樹園が広がっている。予定時刻を超過した場合、この斜面を登って林道に逃げる予定であった。以前のプレ調査で経路は一度辿ったが、いま改めて見ると、普通こんな所を歩こうなんて思わんわな。この斜面を行き来する体力があるなら、ハナから一日での探索を考えたほうが良かったみたいだ。
 トンネル前後から地形が険しくなり、切り通しが多くなった気がする。
 この切り通しには謎のコンクリート構造物が造られている。なんだろうね、コレ。何かの台座みたいだが、アンカーが見つからなかった。
 切り通しの中から出口にかけて崩落しており、ここだけ局所的に荒れ模様となっている。
 ここは切り通しというより溝。見切れているが、何故か風呂釜が置いてある。
 溝の中で懐かしい缶を見つけた。ダイドーMコーヒ。1978年から現在まで販売中の息の長い商品である。このデザインは80年代かな? 今のデザインと雰囲気が似ているので、あまり古臭い感じがない。甘いミルクコーヒーを好むのは、ごつい山の男より、自分と同じ探訪者の気がする。いや、それとも、疲れたカラダにあま〜いミルクコーヒが沁みるとか・・・・?
 小さな橋の跡。倒木が倒れこんでいて歩きにくい。
 少し離れた所にもう一つ。コレも橋の内か。他所から持ってきたような、変な向きで置かれている。
 地味に難所。高巻きした。
 またも丸太橋のある橋の跡。
 ここは流石に怖いので沢渡りさせてもらった。
 小規模な橋が残る。ツラを合わせている所を見ると、軌道時代のものかな? しかし端に寄り過ぎな気もする。
 切り通しを抜ける。
 山火注意の標識が残る橋の跡。やっぱり山火がデフォらしい。
 ここにも丸太橋。ヒヤヒヤしたが、高い方の丸太を手すり代わりに渡ってきた。木は意外と強い。
 この直後から急に荒れ模様になる。
 ここで道がふた手に分かれている。地形図にも反映されている。水平に行くほうが軌道跡だ。森の轍で公開されている路線図によると、この先につづら折れがあるようだ。右の道を進むと、ヘアピンの上段にショートカットできるようだ。
 自分はもちろん軌道をトレースしていく。分岐の先は荒れている。
 が、すぐに小川川を渡る橋の跡に出る。時刻は12時5分。歩き始めてほぼ5時間だ。今日はじめての小川川本流に架かる橋だ。ヘアピンの一段目は小川川の右岸を進んでいる。橋台の横は広場になっており、かつては両岸に営林署の購買やら事務所やらが建っていたようだ。
 レンガが落ちている。建物の建材として使っていたのだろうか。
 川を見下ろすと、大きなコンクリート製の橋脚が立っている。
 起点(花)側の橋脚。
 および橋台。
 終点側の橋脚
 下流方向より橋の跡を見る。
 近影。
 上部には材木が刺さっていた大きな穴が空く。
 橋脚の周りにはボルトの刺さった材木が落ちていた。橋梁の構成材だったものだろうか。ところで、1975年の空中写真を見るに、廃止後それほど間を置かず、大きな橋は撤去されていた可能性が高い。
 右岸の岸にも広い広場があり、建物の基礎が見える。事務所及び購買跡と伝わっている。

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